このところ堅い内容が続いたので、
久しぶりに映画の感想などをつづってみたい。
「毎日かあさん」(2010)
家族が大変気に入っている漫画で、このたび映画化されたとのこと、久々に一緒に観劇した。
原作漫画よりもハードな内容で、アルコール依存症に陥った戦場カメラマンと家族の闘病生活記、ともいえるだろう。
トラウマやアディクションのすさまじさを、「笑い」が少しだけ緩和してくれる。
子どもたちの演技がずいぶんナチュラルだったが、エンドロールとともに流れるスナップショット(主演男優撮影)からも、現場の良い関係性がうかがえた。
印象に残るシーンに、妻が身重の時、公園で夫が、おもちゃのピストルで遊んでいる他の子どもから、本物のピストルと思い込んで取り上げてしまう場面がある。
同じような年代の子どもが、拳銃で死んでいく姿を、リアルに回想する夫。
怖いものを見るように抗議して去っていく、その子の母親。
「もうこの公園にはこれないね」と冷静にいう妻。
いまも世界のどこかで、こうした悲劇は起きているのだろう。
「ハートロッカー」(2009)
テロとの戦いの真実を、ドキュメンタリータッチで描いた「名作」、
今ここに、その戦場を体験しているような、体の芯がむずむずと震える、そんな力がある映画だ。
冷たく、どこか熱く、怖くて、あきらめにも似た、マヒするような、乾いた景色。
冒頭に、「戦争は依存する」というテロップが流れる。
兵士たちの会話や態度が、ナチュラルでリアルなだけに、インパクトが強い。
爆弾処理に静かに取りつかれる主人公は、ディアハンター(my favorite)でクリストファー・ウォーケンが演じた、有名なRルーレットのシーンを彷彿とさせる。
帰国したアメリカのスーパーには、豊富な食品が積み上げられており、イラクとは別天地だ。
小さいわが子と遊ぶ彼は、子どもの頃に興味のあるものはだんだん色あせていく、と語りかける。
そしてまた、新たな戦場で、特殊な服を着て、爆弾を処理する。
「プレシャス」(2009)
これは上と違った意味で、まさしく戦場の映画。
ハーレムの黒人の女子、16歳、2度目の妊娠、中学を辞めさせられる。
義理父からの性虐待の被害者で、母親からの心理身体虐待も続いている。
第一子はダウン症だが、引き取れずに祖母が育てている。
解離とも言える、白昼夢だけが救い、そのファンタジーは見るものも救ってくれる。
母は福祉のお金を取るために、彼女に様々な偽装をさせる。
食事を作らせ、食べ物を強要し、暴言を吐く。
学ぶことへの萌芽を、あきらめと憎しみの力で押しつぶす。
しかし、ロールモデルとなる女性教師や同じような逆境にある友人と出会い、第2子を出産し、施設で生活しつつ、彼女は次第に自立していく。
母が虐待の歴史を語る場面は、圧巻である。
HIVに感染していることが分かった彼女だが、
人としての誇りを胸に、
子ども二人を抱え、
しっかりと足を踏み出す。
どれもシリアスな内容の映画になってしまったが、心に響くのは、やはりこうした映画である。
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