2010年4月22日木曜日

国立のぞみの園を歩いて

季節が変わろうとしている。
寒さと温かさが、あわただしく入れ替わる。
激しい変化の中、植物たちはたくましく芽を広げ、枝を伸ばす。

高崎市にある重度知的障害総合施設国立のぞみの園は、観音山という市を望む高台にある。
広大な敷地の中に、さまざまな草木とともに、寮や施設が点在する。
その診療所で、子供たちや障害を持つ方々の診療のお手伝いをはじめて、2年以上が過ぎた。

お昼休みに時間があると、ゆっくりと園内を歩いてみる。
すれ違う人も少なく、利用者さんの声が寮から響くくらいで、あとは野鳥のさえずりとともに、歩みを楽しむ。
さまざまに入り組んだ道や階段、遥かに望む上毛の山、路傍にテリトリーを争う山野草、夏には子供たちがはしゃいで虫を捕る。

ここでの臨床に、大学病院のような鬼気迫る待合や、5分間診療は似合わない。
ゆったりとした時間と空間が、最大の支援の資源だろう。
なるべく余裕をもって、ご家族と対話するよう心がけている。

園内のひそかな場所に、ある慰霊碑がたっている。
重い障害で先だった子どもたちを、いつくしみ、想い、その親ごさんたちが建てられたという。
この施設の歴史とともに、ひとりひとりの障害や、ともに歩んだ家族の思いが積み重なっている。

厚生労働省の独立行政法人が、事業仕訳の対象になっている。
今度、福島大臣がこの地を訪れ、視察をするという。
障害という言葉の向こうにある、縦横のひろがりや、一つ一つの生きざまを、ぜひ見つめてほしい。

これからの時期、山は桜の後、一気に新録へと向かう。






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